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国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産登録を目指す新潟県佐渡市の「佐渡島の金山」。この秋までに、ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)が佐渡に現地調査に入るとみられる。調査結果を踏まえ、遺産登録するかを審議するだけに、調査への地元の対応は非常に重要だ。調査に訪れそうな場所を一足先に見てきた。
新潟港(新潟市)からカーフェリーに乗り、約2時間半で佐渡島東部の両津港に到着した。港でレンタカーを借り、金山を巡る旅をスタートさせた。
遺産登録を目指す佐渡金山は、「相川(あいかわ)鶴子(つるし)金銀山」と「西三(にしみ)川(かわ)砂金山」の2つの鉱山遺跡で構成される。まずは相川鶴子方面に足を運んだ。
タイムスリップ?
佐渡島の中央北部に位置する佐渡市相川地区。ここに金山見学の拠点となる市の施設「きらりうむ佐渡」がある。映像で相川鶴子金銀山、西三川砂金山の歴史を解説するミニシアターなどが設置されている。近くには、金山を管理していた佐渡奉行所跡もある。
次に向かったのは、佐渡金山を象徴する鉱山跡「史跡 佐渡金山」。見学の基本コースである「宗太夫坑(そうだゆうこう)・道遊坑コース」(大人1500円)を選び、坑道跡に入った。坑内の気温は約10度と肌寒い感じだ。宗太夫坑は、江戸初期の手掘り坑道跡をめぐるコースで、当時の採掘作業を人形と音声で忠実に再現。約400年前にタイムスリップしたような気分になれる。
道遊坑は、明治以降の鉱山施設跡をたどるコース。佐渡金山の象徴になっている露頭掘り(地表に出ている鉱脈を採掘する手法)の跡である「道遊の割戸」の撮影スポットもある。
後日、佐渡金山で唯一の現役施設「南沢疎水道」を視察させてもらった。金山の中から湧き出た水を排水する重要施設で、一般公開されておらず、特別に許可を得て見せてもらった。元禄10(1697)年に完成して以来、金山の坑道を水没させないため排水し続けている坑内は、荘厳な歴史を感じさせた。
この金山では、慶長6(1601)年の開山から388年間に78トンもの金を産出。17世紀には世界最大級の生産量を誇った。
1千年前の記録も
西三川砂金山跡は佐渡で最も古い金山として知られる。現地ガイドの吉倉和雄さん(72)は「約1千年前の平安時代には砂金採取が行われていたとされ、『今昔物語集』にも佐渡での砂金採取の一節が出てくる」と説明する。
大流(おおなが)しと呼ばれる独特な手法で大量の砂金を産出。砂金が含まれる山肌を掘り崩して下方にある水路に落とし、そこに大量の水を流して土砂や石を洗い流し、残った砂金を採取していた。
当時の面影は、西三川で最も砂金産出量が多かったとされる虎丸山の露出した山肌にみてとれる。西三川集落には現在、25軒・約60人が暮らす。時代の流れで農業が主産業になり、地元では砂金山跡の保全活動が熱心に行われている。
筆者:本田賢一(産経新聞)
【アクセス】 ■佐渡島 JR東京駅-新潟駅まで新幹線で約2時間。新潟駅から新潟港佐渡汽船乗り場までタクシーかバスで10~15分。新潟港-佐渡・両津港まで高速船で約1時間、カーフェリーで約2時間半。新潟県上越市の直江津港-佐渡・小木港のルートもある。
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2023年8月9日産経ニュース【味・旅・遊】を転載しています